『民法典』の施行は労働契約に影響を及ぼしたか?
作者:喻鑫 日付:2021-05-23

本文首发于《商法》之“劳动法”栏目,

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民法と労働契約法は、「一般法」と「特別法」の法令適用関係にある。『民法典』が施行されたことにより、労働関連法令に定めのない事項については、民法典が適用されることとなった。したがって、『民法典』の定める最新規定が、企業の人事労務管理及び労働契約実務に重要な影響を及ぼす可能性が生じている。本稿では、『民法典』の内、実務上重要と考えられる規定について、労働契約に及ぼす影響及び労働契約の調整という観点から考察する。

 

労働契約書に個人情報保護条項を設けることの義務化

 

個人情報保護の問題が近年広く注目され、国は各方面からの整備に改めて着手している。個人情報保護に関する法令の規定は、刑事法や行政法、ひいては民事法の領域に至るまで全面的にカバーすべきものと位置付けられる。『民法典』は、個人情報保護について、適用対象の範囲、保護を受けるべき個人情報の範囲、個人情報の処理方法及び条件並びに原則、禁止行為及び不法行為責任等を含むがこれらに限らない諸問題につき、体系的、かつ、明確な規定を設けている。

 

労働関係法令は、企業が従業員の労働契約に直接関連する従業員の個人情報を把握するため、企業に対して一定の知る権利を賦与している。これらの権利行使の際、従業員個人的のセンシティブな情報の取得の収集、保存、使用において、『民法典』等の個人情報保護の規制を不可避的に受けることとなる。企業がこの規制に関わらず従業員の個人情報を取り扱った場合(例えば、許諾なく従業員の個人情報を国内外の関連会社及び第三者に提供する等)、個人情報に関する不法行為責任に関する紛争やこれにまつわる法的責任の負担という事態を引き起こす可能性がある。

 

上記法的リスクの予防の観点から、個人情報保護に関する条項を労働契約に盛り込むことが望ましい。

 

 

1. 収集すべき個人情報の範囲を明確し、労働法律関係(労働契約上の関係)にとって直接関連しない情報(例えば、顔認証、指紋認証などの生体識別情報及び婚姻育児情報等)を削除すること。

2. 従業員の個人情報についての収集、保存及び使用について、明確にこれを授権委任する旨(従業員の個人情報を取り扱う主体、目的、方法及び状況を含む。)を約定すべきこと。

3. 従業員の個人情報の保存、保護体制を明確化すること。

 

『民法典』に基づく約款条項による労働契約の調整

 

約款条項は、事前に起案し、かつ、契約締結の際に相手方との協議を経ない条項であり、法令上、設定者側はその特定の約款条項について提示説明する義務を履行することが要求されている。『民法典』は、説明義務の範囲を責任の免除又は軽減に関する条項に限定することなく、「相手方にとって重大な利害関係を有する条項」にまで拡大した。説明義務が履行されない場合、当該条項は契約内容を構成するものではないとして排除され、相手方当事者に対して何ら拘束力を有しなくなる。

 

『民法典』の約款の規定における「相手方にとって重大な利害関係を有する」との条項は、企業が作成する労働契約において数多く存在しているにもかかわらず、労働関係法令においては、この充分に説明がなされていない約款条項の効力について明確な定めがなかった。労働関係に係る法律実務において、従業員側は企業が提供した労働契約が「約款契約」であると主張するケースが多く、また、その主張部分の条項が無効とされた事例は少なくない。このような場面に際し、『民法典』の約款条項が後続の労働紛争において援用されることにより、係争条項の効力の認定に影響が及ぼされる可能性を排除することができない。

 

労働契約における従業員に重大な利害関係がある条項(役職担当及び場所の調整、給与・福利厚生の調整と支給、契約解除事由、その他従業員の義務又は責任に関する条項の設定を含むがこれらに限らない。)について、企業が何らかの方法で特別に提示し、説明を行うことが望ましい。例えば下記のような方法が考えられる。

 

 

1. 重要な条項について太字で下線を用いて強調する。

2. 従業員と労働契約の締結について協議すると同時に、従業員に対して条項に関する説明書を提示し、従業員の確認及び署名を得る。

3. 労働契約において、契約においてすでに充分に協議し、説明した旨の条項を追加する。具体的には、契約書面の余白部分において、従業員に「すべての条項を完全に理解し、異議がないことを確認しました。」と手書きで記入してもらうような方法を採ることもできるであろう。

 

労働契約書における黙示の意思表示の適用

 

『民法典』は、黙示の意思表示について規定している。即ち、沈黙は、法令の規定、当事者の約定又は当事者間の取引慣行に合致する場合において、意思表示があったものとみなすことができるとしている。労働関係法令においてその旨を定める明文規定は現時点で存在しないが、一部の労働紛争に関する裁定意見や内部判断基準においては既に存在している。『民法典』は、黙示の意思表示の適用基準をより明確にし、労働契約において予め約定する方法により、複雑な労働紛争のリスクに対応する余地を創出しようとしている。

 

企業は労働契約における黙示の意思表示の適用場面について一層明確化することが望ましい。事前に明確に約定した場合、司法実務において肯認される可能性を見出すことができるであろう。具体的な場面としては下記があげられる(下記のものを含むがこれらに限らない)。

 

 

1. 労働契約において、企業は生産運営及び管理の必要性に応じて単独で従業員の役職、就業場所を合理的に調整することができる旨を労働契約に明記する。

2. 特別の報酬・福利厚生の構成と支給条件を労働契約に明記する。

3. 従業員の給与調整、異動、業績考課、処分決定等に関する重要な通知に対する異議申立期間を定め、期限を超過しても異議を申し立てなかった場合、同意したものとみなす。

 

上記の他に、『民法典』の公布及び施行は、労働契約の保存管理、セクシャルハラスメント等に関する企業の労働契約及び管理に影響を与える可能性がある。これらを企業は充分に重視し、労働契約条項の整備及び調整により、人事労務上のコンプライアンスを効果的に向上させるべく、先を見据えて対応措置を講じる必要があると考える。

 

▲竞天公诚律师事务所李强强对本文亦有贡献。

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